年金の基礎年金部分の増額 底上げに 厚生年金を流用?
政府が検討している「基礎年金の底上げのために厚生年金の積立金を活用する」政策案について、以下に詳細、各界の意見、問題点を整理し、私の見解を述べます。
政策案の概要
現行の年金制度では、物価や賃金の上昇に応じて年金給付額を調整する「マクロ経済スライド」が導入されています。しかし、厚生労働省の試算によれば、厚生年金は2026年度にもこの減額調整を終了できる一方、基礎年金は2057年度まで続く見込みです。
*マクロ経済スライドについて
現在、日本の年金制度には「マクロ経済スライド」という仕組みがあります。
これは、少子高齢化などで年金財政が厳しくなる中でも、年金制度を持続させるために導入されたものです。
具体的には、
本来、年金は「物価」や「賃金」が上がれば、それに合わせて増やす仕組み(※物価スライド)になっています。
しかし、マクロ経済スライドが発動すると、その増え方を少しだけ抑えて調整します。
つまり、年金額は増えるけれど、物価や賃金の上昇ほどには増えない、という仕組みです。
これにより、年金財政への負担をゆるやかにし、制度を長持ちさせることが目的です。
ここで問題になるのが、**このマクロ経済スライドの「終了時期」**です。
厚生年金(会社員や公務員などが加入):2026年度ごろには、スライドによる調整が終わる見込みです。つまり、その後は物価や賃金の上昇にしっかり連動して年金が増えるようになる。
基礎年金(すべての人が対象になる最低限の年金):スライドの調整が2057年度まで続くと試算されています。つまり、30年以上も年金の増え方が抑えられたままです。
なぜこの差が生まれるのか?
それは、財源の違いと加入者の構成にあります。
厚生年金は「現役世代の保険料」+「事業主の負担」+「積立金」で成り立っており、財政的に余裕がある。
一方、基礎年金は、主に国の税金や保険料で賄われていて、保険料の上限も低く、財源が限られています。
そのため、基礎年金のほうが「年金抑制期間」が長く続いてしまう、というわけです。
この格差を是正するため、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の減額期間を短縮し、双方ともに2036年度に減額調整を終了させる案が検討されています。
各界の意見と問題点
労使双方からの批判:厚生年金の積立金を基礎年金に充てることにより、厚生年金加入者の受給額が一時的に減少する可能性があります。これに対し、労使双方から「厚生年金の財源を基礎年金に流用するのは不適切」との批判が出ています。
政治的な懸念:与党内からも「この流用法案を提出すれば参院選で惨敗する」との声が上がっており、政治的なリスクが指摘されています。
政府の対応:これらの批判を受け、政府は基礎年金底上げ案の修正を検討し、厚生年金の受給総額が減少しないような措置を設ける方向で調整しています。
私の意見
年金制度の持続可能性を高めるための改革は必要不可欠です。しかし、特定の世代や職業に過度な負担を強いることなく、公平性と透明性を確保することが重要です。厚生年金の積立金を基礎年金に活用する案は、短期的には厚生年金加入者の受給額減少というデメリットがありますが、長期的には基礎年金の安定化に寄与する可能性があります。そのため、政府は関係者との丁寧な対話を重ね、全体のバランスを考慮した上で、最適な解決策を模索すべきです。