食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律及び関連法-食料確保及び農業促進に向けた挑戦
2024年5月29日に国会にて、「食料・農業・農村基本法」の改正案が成立し、2024年6月5日に公布・施工されました。現行法は1999年に制定されたので、四半世紀(25年)ぶりの改正となります。さてどのように変わったのでしょうか。全部で43条あった条文が56条への変わり、13条も改編や追加がされています。結構追加や更新が行われています。以下に主に追加になった条項を記載します。食料確保や農業促進に対し、国が強い危機感をもって、今回の法案を成立させたように感じられます。
①「団体の努力」の条項を追加(第12条)
②「食料の安定供給」は「食料安全保障」に変更
③「食料の円滑な入手の確保」の条項を追加(第19条)
④「農産物の輸出の促進」に関する条項を追加(第22条)
⑤「食料の持続的な供給に要する費用の考慮」の条項を追加(第23条)
⑥「先端的な技術等を活用した生産性の向上」の条項を追加(第30条)
⑦「農産物の付加価値の向上等」の条項を追加(第31条)
⑧「環境への負荷の低減の促進」の条項を追加(第32条)
⑨「農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進」の条項を追加(第37条)
⑩「伝染性疾病等の発生予防等」の条項を追加(第41条)
⑪「農地の保全に資する共同活動の促進」の条項を追加(第44条)
⑫「地域の資源を活用した事業活動の促進」の条項を追加(第45条)
⑬「障害者等の農業に関する活動の環境整備」の条項を追加(第46条)
⑭「鳥獣害の対策」の条項を追加(第48条)
上記追加になった条項は食料危機に対し、食料安全保障という強力な言葉を使い、食料をなんとしても確保していくという強い意識が感じられます。「食料の円滑な入手の確保」により、食料危機時等を想定し、円滑に入手するための条項だと思います。また、「農産物の輸出の促進」という条項があり、輸出によって国内の農産業を発展させて行くという強い意志だと思います。その他に「農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進」、「先端的な技術等を活用した生産性の向上」という条項も追加になり、農業経営者を支援する、生産性を向上させるといったことを考えており、国内の農産業を発展させるという強い意志を感じます。また、「食料の持続的な供給に要する費用の考慮」という条項も追加になり、適正な価格への消費者理解の促進も考えていると思います。国は今回の法改正で、食料の確保、農産業の発展に対し積極的に挑んでいく姿勢が感じられます。なお、今回の法改正について、良くまとめられている以下HPをご参照下さい。
「食料・農業・農村基本法」改正を読み解く(SMART AGRI HP)
また、法令に関する農林水産省の説明及びの法令そのものは以下リンク先を参照下さい。
食料・農業・農村基本法(農林水産省の説明)
食料・農業・農村基本法
関連法-「食料供給困難事態対策法」等の3つの法律
食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律に合わせて、関連法として、以下3つの法案も成立しました。なお、施工日は①と②は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日で、③は公布の日から起算して6ケ月を超えない範囲内において政令で定める日となっていて、①と②は2025年4月1日施行予定、なお、③は2024年10月1日に施行されました。
①「食料供給困難事態対策法案」(成立日2024年6月14日、公布2024年6月21日)
②「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する 法律案」(成立日2024年6月14日、公布2024年6月21日)
③「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案」
(成立日2024年6月14日、公布2024年6月21日)
上記の関連法で①について多くの議論が生じているようです。
まずは、農林水産省のこの法律に対する説明を見てみたいと思います。法律は農林水産省のHPより以下目的で作られましたとのことです。
「近年、世界的な食料需給の変化と生産の不安定化により、食料供給が大幅に減少するリスクが高まる中、食料供給が減少し、国民生活・国民経済に影響が生じる事態を防止するため、平時からの対応に始まり、必要な対策を政府一体となって早期から措置を行う「食料供給困難事態対策法」が令和6年の通常国会で成立しました。」(出典:農林水産省のHP)
この法律の概要を書きますと、平時には食料供給が困難な兆候が表れていないか、食料供給が困難になっていないかモニターを行い、そのような状態になっている場合には政府「政府対策本部」が、関係省庁が行う必要な対策の方針を決定し、供給困難な兆候場合は、民間に対し自主的は供給確保の取組を要請を行い、供給困難な状況場合は供給量の正確な把握、供給確保のための指示を行い、出荷・販売の調整、輸入の促進、生産・製造の促進を行います。この中で事業者は計画を作成・届出を行います。この計画を作成・届出を行わない場合に20万円以下の罰金が科せられます。詳細は以下の農林水産省のHPをご覧ください。
今、この法律に対し、世の中(SNS等)では「国が増産を指示」、「米や芋を花農家に無理やり作らせる」、「増産しなければ罰金を科す」、「平時から食料の配給制度が始まる」とか言われており、農林水産省はそのようなことはないと言って、そのような情報は正しくないので、ご注意下さいと言っています。いろいろ考えさせられる法律だと思いますが、このような議論が世の中でおき、平時から国民みんなが食料確保に向け、農業発展や輸入等に対して真剣に考え認識をしっかりもってもらうことが大切と思いました。また、平時から国内の農業を維持・発展させることが重要と思いました。国が今回制定した農業基本法等で農業事業者に対する支援を強化し農業従事者を増やしたり、生産性を上げるために農業従事者を支援したり、価格が低すぎないよう適正価格に設定するようなことを強化することが重要と思いました。